2016年の7月31日の夜から8月1日の朝にかけて男体山開山祭にて登拝してきました。
春峰に参加させていただいた日光修験さんの夏峰の男体禅定として参加しましたので、どんな登山になったかお伝えしたいとおもいます。
男体山じたいは子どものころに家族と登っていて、岩にかじりついて登っていた記憶があります。
十年以上たって久しぶりの男体山、どきどきでした。
日光修験の山王院さんに夜8:00に集合しました。
着替えて法楽してから、みんなでマイクロバスにのって日光へ。
二荒山神社ではぽつぽつと小雨がふっていました。予報では大雨や雷ともいわれていたので、それに比べればまだましだなあというかんじ。でも、明日の御来光は見れないかなあと言われると残念な気持ちになりましたが、わたしは晴れ女でいざというときに雨があがるので、しかもこんなにたくさんの人が晴れを願うならきっと天に通じるだろうと楽観的におもっていました。
神社では深夜にかかわらず太鼓の音が響いていて、これからはじまるぞ~!という気分が盛り上がってきます。
0:00に近づくにつれて、境内の中にはどんどん人が増えて行って、こんなに修験とは関係のない一般の登山客の方も開山祭で夜間登山されるんだなあ!と驚きました。
神社から山へとつながる登山口の前にある門は閉められていて、日光修験の山伏たちの立て法螺のあと、まずはその前で二荒山神社の神職さんからお祓いを受けます。
その後日光修験の法頭が入山九字を切って、神職の方々が開門されました。
夜間登山は6年くらい前の富士登山以来です。
登りながら振り返ると、ずっと下までヘッドライトの光が繋がっていて、こんなに大勢の人が男体山に登拝するんだなあとおもうとなんだか感動的でした。
最初からけっこうキツイ登りがつづいて、汗だくだし呼吸も乱れました。
日の出は4時すぎということで、以前登られた方々が「あんまり急いで登っても山頂で待つのが寒くてつらいから、無理ないペースでゆっくり登ったほうがいいよ」とおっしゃっていたので、適度に休みながら登っていきます。
山道からいったん舗装された道路にでると、ぐっと楽になり、おしゃべりなどしながらすいすい進めました。
舗装道路からまた山道にはいる五合目ところの前で、地元の方かボランティアの方が炊き出しなどしてくれていました。
汗をかいて塩分を失った身体に沁みる豚汁は、なんと100円です。安すぎる!
ふつう縁日とかでも300円くらいするし、山価格なら500円くらいしそうなものなのに。具だくさんでパワーがでました。
また、塩漬けきゅうりは無料で配ってくださっていました。素晴らしいお接待でした。
ここでは仮設トイレもあるし日赤の救護の方や自衛隊の方々もいて、とても手厚くフォロー体制が整っています。
五合目からは石の鳥居をくぐって、また傾斜のキツイ山道です。
高度をあげるうねうねとしたまき道がつづいて、岩場であしもとも段差が多いので、自然と「よいしょー」や「どっこいしょ」の掛け声が口から出ます。
前後の周りの人もみんな口々に掛け声をかけていて、今みんな同じような辛い登りを一緒に経験しているんだなとおもうと、なんだか一体感があって面白かったです。
普段の登山はあまり大勢で登らないので、列になってみんなで登っていくのは独特の楽しさと連帯感があるなあとおもいました。
そして、辛い登りの最中にちょっと目線を上にあげると、なんとすごい密集した星の数が見えるではありませんか!!
雲が晴れてきて、星空がみえてきてたんです。雲の切れ間の一部でもすごい数の星がみれて、おもわず「ああっ」と叫んで前の方をびっくりさせてしまいました笑。
森林限界を超えると、とたんに道も土と泥からざらざたした火山岩にかわります。
火山の力でできたお山なんだということが感じられました。
ちょうど4:00ちょうどくらいに登頂しました。
薄青くなりはじめた空に、提灯の暖かな光で奥社の社殿が照らされていて、前を歩く山伏の方々の姿と相まってとても美しかったです。
まずは無事登頂できたことを社殿の前でお礼を言いました。
そして、登っているときは汗かくくらい熱かったのに、頂上ではどんどん体が冷えてくるので、もってきた風よけのレインウェアを着こみました。
このとき気温は10度前後だったそうで、その後7時まで頂上にいたのでこれだけでは寒かったです。来年はフリースか軽いダウンを持ってこようとおもいました。
刻一刻と空の色が変わっていきます。
残念ながら太陽のところに厚い雲があって御来光自体は見えなかったのですが、雨もやんだし赤く染まる雲はそれはそれでとても神秘的な光景だったので、とても感動的でした。
奥のほうにはまた鳥居と、小高いところに大きな剣の刃のオブジェがあります。
社務所では山頂の御朱印やこの期間だけのお守りなどが売っています。
可愛い黄色のバンダナと御朱印をお願いしました。
御朱印には太郎山神社という文字があります。
というのは、男体山の頂上にはもう一つ、太郎山社があるのです。
こちらがその社殿です。
社殿の裏にあるこの山が太郎山というそうです。
7:00頃奥社の社殿の前で神職さんにお清めしていただいて山伏の法楽をしたあと、こちらの太郎山社でじっくりと顕密修法を行いました。
ここからは中禅寺湖がよく見えます。深い紺青の水面が滑らかです。
富士山もしっかりみえました。やっぱりどこからみても、いつみても、富士山の姿はかっこいいですね~。テンションが上がります。
浅間山や遠く南アルプスの山並みまでみえました。
その後7:30頃から下山しはじめます。
法楽まで時間があって3時間くらい山頂で待機があるので、参加される方は絶対に防寒着を持っていったほうが良いです。
あと、仮設トイレも紙がないので、女性の方は特にトイレットペーパーを持参したほうが良いとおもいます。
下りはさくさく降りて、3時間ほどでした。
途中瀧尾神社のところで、新客という初めて峰修行に参加するものが試される胎内くぐりの岩がありました。しかし、その先は去年から岩が崩落していて通行止めなので、進めずに引き返しました。
瀧尾神社で法楽をしたときに、わたしは名前からしてここに水源か滝があったのかなとおもっていましたが、先達さんに尋ねるとどうやら「瀧尾神社」という名前は空海さんと縁が深いようです。調べると京都に有名な神社があるそうです。
どうしてここの場所にもその名前がついているのか、どうゆう所縁なのか気になるなあとおもいました。
無事下山したのちは、二荒山神社で参拝しました。講の参拝ということで、この時期だけ特別の内陣参拝もできました。
これは普段神職さんもあまり立ち入らない内陣にはいって参拝することができる機会です。
そのため作法が色々あり、息がかからないよう特別な紙を口にくわえたり、膝をついて進むなどありましたが、大変貴重な機会をいただけてありがたかったです。
内陣の中については、口に出したりあまりこういったブログなどで言及するものではないとおもうので書きませんが、とても神聖な空間で拝むことができて、恐れ多くてちょっと怖いような、嬉しくて感動的なような、ドキドキしてあっという間だったような特別な空間でした。
その後バスにのって中禅寺湖湖畔の歌が浜へむかいました。
今年は勝道上人が日光開山されて1250年ということで、この歌が浜にある日光山中禅寺では秘仏だった吉祥天の御開帳がされています。
勝道上人が修行中にここに吉祥天が舞い歌ったことからこの「歌が浜」という地名がついたそうです。
吉祥天立像は、きれいというより可愛いという言葉が似あうような、ふっくらとしたお顔のとても優し気な像でした。それも素敵でしたが、わたしはこの後参拝した本堂のほうの立木観音に衝撃を受けました。
国の重要文化財でもある、御本尊「十一面千手観世音菩薩」はひとめみて何か異質な迫力がある仏像でした。
わたしは大学で芸術学を学んでいたので、東洋美術や仏像も沢山図像をみてきて、だいたいこの時代の仏像はこんな顔、とかこの地方の仏像の特徴はこう、とか分類がなんとなくわかるのですが、この立木観音は今まで見てきた仏像のどれにも似ていない、古い時代ということはわかるけどまったく見当もつかない、とにかく独特な存在感があるのです。
もう、それこそ恋に落ちるようにびびびと衝撃が走って、目が離せない、すごく引き付けられる!心がざわめく!!というようなまさしくひとめぼれをしてしまいました。
こちらの中禅寺さんに立ち寄ることも立木観音を見ることも予定としてしらなかったので、登山でつかれてぼうっとした頭でいたところに、一気に興奮して目が覚めました。
そして、今までわたしが見てきたどんな仏像とも違ってみえるこの立木観音は、勝道上人が中禅寺湖上に千手観音様をご覧になり、その姿を桂の立木に彫ったと伝えられているものでした。
わたしはそれまで、日光を開山した勝道上人という名前を春峰で知っても、そんな時代に日光なんて関東の山奥を開くなんてすごい人だなあとぼんやりとした聖人のイメージしかなかったのですが、この立木観音をみて、勝道上人という人はものすごいパワフルでものすごい変わり者だったに違いないとおもって、一気に興味がわきました。
男体山を登ろうとしても、なかなか果たせず、なんと15年挑みつづけてようやく登拝したというエピソードからも、言葉が適切でないかもしれませんが、ちょっとどうかしているというか、クレイジーな情熱の持ち主というか、エキセントリックすぎるエネルギーが迸っていますよね。
山を登ろうとおもって、15年間チャレンジし続けるってその根性普通じゃないですよ、普通2.3年であきらめます。そうじゃないから開山上人になったんだとおもいますが、なんだかこの仏像にであったことで、歴史上の偉人という遠い距離にいた勝道上人が、ぐっと近くの大好きになっちゃう魅力的な人物に感じられました。
立木観音も、その勝道上人のありあまるエネルギーがまだ充満しているかんじで、なにか生々しい迫力があります。
ポストカードなど欲しかったですがなかったですし、やっぱり生の迫力が素晴らしいので、また個人でも本堂はお参りできるそうなので、ぜひまた立木観音様に会いに来たいとおもいます。
思いがけない場所で思いがけないような出会いがあるから、神社仏閣巡りは楽しいですね。
ぜひ気になった方は、日光にいった際にはぜひ立木観音様に会ってきてください。
神々しい風景と素敵な仏像に出会えた夏峰でした。
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