諏訪大社についてまだまだ書きたい記事があるのですが、書きたい事が多すぎて時間がかかってしまっているので、先に旬の話題を。
5/5子どもの日に、栃木県小山市間々田の間々田八幡宮では『ジャガマイタ』というお祭りがありました。
今回は初めて行ってみましたが、地元の人々の祭りにかける想いが伝わってくる、地域のためのとても良いお祭りだったので、その模様をお伝えしたいとおもいます。
わたしが間々田八幡宮に到着したのは10:30頃でした。
ちょうど最後の蛇が町内の方たちに担がれて、道から参道に入るところに出くわしました。
大人だけでなく、担ぎ手には中高生も多く、しっぽのほうは小さい子どもたちが持っています。
参道に入ってすぐ右側には、頼朝お手植えの松の看板があります。残念ながら松は枯死してしまったそうですが、間々田八幡宮がいかに古くから数々の武将の覚えがあった神社かというのがわかります。
創建は1200年余り前の天平年間にさかのぼります。境内の一部は公園になっていて、そこには八幡古墳群といわれる大小様々な墳丘が点在しているので、古代からこの地が思川流域の重要な場所であったのでしょう。
さて、境内に入った蛇は、まずは広場に勢ぞろいします。
各町内ごとに個性をだして蛇を作っているのが素敵です。
担ぎ手の少年たちも、そろいの法被を着て誇らしげに練り歩いています。
周りには屋台も出ていて、とても賑やかです。
「男の酒 じゃまつり」という日本酒が樽から試飲させてもらいました。きりっとした味で、祖父のお土産に買いました。
先に本殿に参拝します。
江戸時代に再建した社殿は、日光東照宮の大修理に合わせて下野に来ていた宮大工が行ったということで、彫刻など見事です。
本殿の裏には林が広がっていて、緑の中を抜ける風がとても気持ちが良いです。
11:30から、広場にいた蛇が一匹ずつ階段を上って本殿の前に勢ぞろいします。
地元の幼稚園の部活動としてつづけられている和太鼓グループが、ドンドンと太鼓の音で場を盛り上げていきます。
これが、素晴らしいパフォーマンスでした!!小学生が多いようでしたが、楽譜もみないでぴったり息の合った演奏をしていて、聞きごたえがありました。
その音の中で、「ジャーガマイッタ、ジャガマイッタ」と担ぎ手の掛け声が聞こえてきます。
全長15mもあり、しっかり頭の上に掲げないと、蛇のお腹が階段にあたってしまうので、息を合わせて運んでいました。
本殿の前に並ぶと壮観です。
“ジャガマイタ”の語源ともいわれる、「蛇が参った」状態ですね。
巨大な蛇が神妙に本殿を参拝しているようで微笑ましいです。
この蛇は7つの町内ごとに中学生を中心にそれぞれ独自に行われます。
体はワラ、シダ、竹など身近な材料でできていて、蛇頭はいろんな装飾が凝らされています。
なかでも今回特に目を引いたのは、三丁目の蛇頭です。
木彫りの彫刻の蛇頭は白木が美しく品があって目を引きます。なんと、これはどこかプロに頼んだのではなく、やっぱり町内の方が彫ったそう。ここまで出来たら、それはもはや素人ではないよ!という出来栄えです。
蛇には雌雄があるそうで、この蛇は女性だそうです。だから、たてがみのところに藤の花の飾りをして、乙女なかんじになっているんですね。とっても可愛いです。
これらは毎年作り直しだそうで、というのも祭りの終盤、夕方に行われる“蛇もみ”という蛇がうねりながら踊る儀式をすると、ボロボロになってしまうそうです。かつては御神酒に酔った若い衆が喧嘩腰で蛇をぶつけ合うこともあったそうですが、今はもう少し平和に、でも巨大な蛇体がうねる、祭りのクライマックスだそうです。
12:00から“修祓式”です。
宮司さんからお祓いをうけます。本殿の外にいる私たちむけてもお祓いしてくださいました。
一匹一匹宮司さんより口に御神酒を注がれた蛇は、本殿を一周します。
ここで、このジャガマイタを文化財として指定したい市や県の意向があったのか、今年は衆議員、参議院、文化庁などから来賓が多く、挨拶がすごく時間がかかっていました。最初のうちはまあしょうがないと思って聞いていましたが、あまりにもいるので、子どもは飽きてしまうし祭りも間延びするし、炎天下の中ずっと立っている見物客も大変そうだし、なんだかなあというかんじでした。
そういった式典をしなかればならない事情はわかるので、式典は先に済ませて、お祭りとは別にしたほうが良かったのでは、とおもいます。
来賓挨拶で時間が押してしまい、肝心のこの後の“水呑みの儀”が巻で進行されていたのは、地元の方の意向も観光客の期待も無視したものだと感じました。
13:00にようやく蛇たちが弁天池に向かいます。
ここが蛇の水呑み場です。
最初に来た蛇は、のどが渇いたというように豪快に飛沫をあげて水を飲んでいました。
今日は夏日で25度以上あり、晴天でした。
このお祭りは田植えの終わった時期に雨乞いとして行われているそうなので、蛇も水がうれしかったのか勢いよく池へドボン!!
見物人がワーッと沸きました。
サービスからかぐるぐる回っていると、進行からそろそろ上がるように指示が出されてしまっていました。
見ているほうは、迫力があって大変楽しかったです。
その後も続々と蛇が続きます。担ぎ手が中学生が多いところは、勢い水に飛び込んだのはいいものの、水を含んだシダなどがずっしり重くなっていて、持ち上げるのが大変そうでした。方々から「頑張れー!」の声援が飛びます。
この後は、蛇は町内をまわり、夕方間々田小学校校庭などで“蛇もみ”が行われます。
わたしは前年のジャガマイタで使われた蛇の髭が入った手作りのお守りを購入しました。
さて、このジャガマイタの起源ですが、諸説あるそうですが江戸時代くらいから行われているようです。
「ジャーガマイッタ、ジャガマイッタ」の掛け声の後に、かつては「4月8日のジャガマイタ」と続きました。
4月8日はお釈迦さまの誕生日で、東南アジアの仏教国では水かけ祭り“ソンクラーン”が有名ですね。
わたしもこの時期タイやラオスを旅して、乗り合いタクシーに乗っているバックパッカーなのに容赦なくバケツの水をぶっかけられたことを思い出します笑
昭和40年代まで、ジャガマイタは4月8日の花祭りの日に行われていたそうです。現在は子どもたちが確実に祭りに参加席るように、5月5日の子どもの日に変更になったという経緯があります。
このお釈迦さまと龍の関係ですが、根底にあるのは『八大竜王信仰』のようです。これは釈迦誕生のときに八匹の竜(八大竜王)が祝福の甘露を降らせたという伝説にちなむものです。ここから、お釈迦さまの像にお茶をかけたり、東南アジアの水かけ祭りに繋がっていくのですね。
特に、4~5月は東南アジアは乾季で一年で一番熱い時期なので、人々も切実に雨を望むのでしょう。
日本でも、田植えが終わったこの時期に、農作物の実りを祈願する古い信仰としてあります。
この信仰が間々田では、竜を模した蛇体をつくって御神輿のように担いで回り、雨乞いや五穀豊穣、疫病退散を祈願するようになったといわれています。
そう、これはお釈迦さまにちなんだ儀式。
これを、神社でやるっていう、この精神笑。
さすが日本というか、受容力が半端ないですよね!!いいなあ、これこそが日本の良さがよなあと嬉しくなります。
八幡信仰はとくに神仏習合と縁があります。
祭神である八幡大神の誉田別命(ホンダワケノミコト)は応神天皇のことで、神仏習合では大日如来の変化した姿としてとらえられていました。天皇家は太陽神である天照大神の子孫なので、同じ“太陽”というシンボルが両者を結びつけやすいのかもしれません。
それにしても、異なる宗教のお祭りを堂々と取り入れちゃうのは、懐の深さや積極的な節操のなさというよりも、細かいところはあまり気にせず自分たちに馴染む良いものはやったらいいんじゃない、というおおらかな精神な気がします。
そんな日本人の素朴さと、間々田の人々の地元愛が見れる、素晴らしいお祭りなので、興味のある方はまた来年、栃木にいらしてみてください。
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